泊簡易裁判所 事件番号不詳 判決
主文
被告人を罰金参千円に処する。
右罰金を完納することができないときは金参百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(一) 罪となるべき事実
被告人は業として公衆浴場を経営しようとする者は都道府県知事の許可を受けなければならないのに所轄富山県知事の許可を受けないで、昭和二十八年十月二十三日から同二十九年四月二十五日まで富山県下新川郡朝日町(当時泊町)沼保江上千百九十二番地において、公衆浴場の施設を設け、貸席料名義で入浴料を徴し、下山喜太郎外多数の公衆を入浴せしめ、以つて公衆浴場を経営したものである。
(二) 証拠の標目(省略)
(三) 法令の適用
被告人の判示所為は公衆浴場法第二条第一項同法第八条第一号罰金等臨時措置法第二条第一項に該当するので所定刑中罰金刑を撰択し所定金額の範囲内で被告人を罰金参千円に処し右罰金を完納することができないときは刑法第十八条に則り金参百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、訴訟費用の負担については刑事訴訟法第百八十一条に従い全部被告人をしてこれを負担さすべきものとする。
なお弁護人は凡そ犯意の成立には違法の認識を必要とする。本件は行政犯であるが、行政犯における場合違法の認識は、行為者が当該刑罰法規を認識していることを必要とする。
しかし、違法の認識を欠いている場合には刑事責任を科すべきでない、本件の被告人は当初から悪意を以て浴場を営んだものではなく県の係官から貸席ならば入浴者から貸席料として金銭を徴収しても差支えない旨申し聞かされたので、これを信じ貸席の届出をなし貸席営業として団体若しくは町民に貸席し、入浴者から貸席料として金銭を徴収したのであるから法違反を構成しない。従つて被告人には違法性の認識を欠いていたのであるから、刑事責任は阻却される旨主張すけれども、所謂自然犯たると行政犯たるとを問はず犯意の成立には違法の認識を必要としない。従つて被告人が所論のように県の係官の言により貸席営業として貸席し、入浴者から貸席料として金銭を徴集しても差支えないものと速断し、判示の浴場を営むことが違反にならぬ行為であると信じたとしても、斯る事情は未だ犯意を阻却する事由とすることはできないから、右弁護人の主張はこれを採用することはできない。
よつて主文の通り判決する。(昭和二九年一一月二四日泊簡易裁判所)